director's voice

工房探訪・風の音取材

昨日は学生時代に慣れ親しんだ西武池袋線に久しぶりに乗って、
鍛金の作家さんを訪ねてきました。

どんなに暑いことか、、と覚悟していきましたが、
狭山湖の影響なのでしょうか、涼やかな工房でした。
作家も涼やかな青年!のような方でしたので、
いっそうそう感じたのかもしれません。

工房でお話しを伺い、 その後一緒に近くのギャラリーを訪ね、
ずいぶんお話しをしてきました。
作家の方にとって、企画者と話すことで作品作りが整理されたり、
道筋が立っていくこともあるかと思いますが、
企画者にとっても、作家とお話しすることで、
企画の骨格が正されたり、肉付けされることがあるんですよね。
今日もそんなことを感じました。

「工房からの風」も、応募する方、来場される方からすると、
クラフトフェアのひとつと思われていることは、
否定も肯定もしないのですが、
同じような会を作っている、という気持ちはまったくないのです。

並記されるような会が増えて、同じ出展者の顔ぶれになるほどに、
「工房からの風」の進む方向を、心澄ませて思います。
すでに灯台の明かりも届かない、大海原に出てしまったようなものですから、
磁石の針は、自分たちで見定めないと。。。

なんとなくクラフトフェアの雰囲気とか、工房や作家に対するイメージとか、
楽しいこと、素敵なこと、と思われていることから、自由であるように。
そんなことを思います。

具体的には、規模を大きくしすぎないように。
新人作家を含めた50人という規模が、空間に対しても、
来場者の方々が、気持ち的にも体力的にも、
ゆっくり作家とその仕事と出会えるマックスのような気がします。
その構成の中で、少しでも、ひとりひとりの作家のことを、
丁寧にご紹介できるように。。。
これが「工房からの風」のひとつのあり方なんだと。

たとえば、同じ会に出展する作家でも、作品作りのスピードは
それぞれに違います。
工程的に在庫をある程度確保できる仕事の作家は、
頻繁に「クラフトフェア」に出展したり、展覧会を開けますが、
(もちろん努力をされていらっしゃるからなのですが)
一方、どんなに根を詰めても、ひとつの作品を作るのに、
時間がかかってしまう制作もあります。
そのような作家の方が、今の風潮、出展形態のスピードに
途方に暮れてしまわないように。。。
そんなことを願います。

スピード感のある仕事や、
楽しさ、ワクワク感を与えてくれる仕事ができる作家の魅力は、
伝わりやすいですね。
それもすばらしいことだけれど、もっとゆっくり、じっくり、
ある意味、鈍重な仕事の中にある光を見過ごしてしまわないように。

そのために、私たちにいったい何が出来るのだろう。。。
ときにこちらが途方に暮れそうになりますが(苦笑)、
そんなときこそ、ひとりの作家を紹介することを
コツコツ進めることしかないように思います。

と、ぶつぶつひとりごちましたが!
そんな思いを抱きながら、「工房からの風」に向かっています。
「風の音・工房からの風特集号」も、
その思いをかたちにするひとつなのです。